仮想通貨取引所に口座を開設して仮想通貨を購入する場合、あるいは既に取引している場合、どこかに仮想通貨を保管する必要があります。仮想通貨は当然ながら現金のように物理的形状を有していません。仮想通貨はプログラムコード上でのみ存在し、そこで、仮想通貨の所有者が持つ公開鍵(パブリックキー) と秘密鍵(プライベートキー)を通じて安全に保管され、取引、受領、消費可能な状態に置かれています。
仮想通貨はブロックチェーン技術の上に存在しており、それゆえ、ウォレットは不可欠です。もし何らかの仮想通貨取引を行う場合、ウォレットは選択肢ではなく必須条件です。
このことは、ビットコインやイーサなどの仮想通貨をマットレスの下に隠したり、庭に埋めたり、エドガー・アラン・ポーの「黄金虫」のように、世界の終わりを示すような場所に埋める、という選択肢はないということです。仮想通貨はウォレットで保管することになるのです。
一方で、仮想通貨の投資、取引を始めようとしている人はもう一つ考えなければならないことがあります。一つか複数の仮想通貨ウォレットを用意し、そこで保管しなければならないことは理解できたと思います。しかし、実際には多くの種類の仮想通貨ウォレットと、それを提供する膨大な数のプロバイダーやメーカーがあり、その中から選択しなければなりません。
そこで、仮想通貨のウォレットにはどんな種類があり、それぞれの長所と短所はどんなところにあるのでしょうか。
仮想通貨ウォレットは数多くありますが、まず2つのグループに分けることができ、その中からさらに2種類に分けることができます。最初の区分けは「ホットウォレット」と「コールドウォレット」です。
「ホット」「コールド」とは、ウォレットがネットに接続されているか否かを意味します。「ホットウォレット」はネットに繋がっており「コールドウォレット」は繋がっていません。後者の場合、安全性が高く、 ハッカーから守られていることになります。ホットウォレットの利点は迅速かつ利便性の高い取引ができることです。
もちろん、コールドウォレットであってもネットに繋いで何らかの取引をしなければならない時があります。しかしそれは非常に短時間で行うので、その僅かな時間にハッカーの餌食になる可能性は極めて低いです。
経験則では、仮想通貨の所有者は、手元に置いておきたい仮想通貨を少しの量だけホットウォレットに預け、取引を行っている傾向があります。あるいは、僅かな時間だけコールドウォレットからホット・ウォレットに移管しての取引や、コールドウォレットを一時的にネットに繋いで取引を行っています。ネットと接続している時間帯は、コールドウォレットの仮想通貨は一時的に「ホット」な状態にあることになります。
仮想通貨取引所内のウォレット: 仮想通貨間の取引でも、あるいは不換通貨から仮想通貨にする場合でも、取引所を通じて仮想通貨取引をする場合、口座を開設する必要があります。取引所の口座には仮想通貨ウォレットが含まれており、それを通じて仮想通貨を送金もしくは受け取ることになります。ウォレットが口座に含まれているので、別途ウォレットを用意する必要はありません。同時に、その取引所が扱う仮想通貨全てをそのウォレットで保管できます。
長所: 別途ウォレットを用意する必要がないので、取引所での売買に使うにも、仮想通貨を不換通貨に交換して引き出す時にも便利です。
短所: 取引所を標的とするハッカーに狙われやすい点があります。取引所によってセキュリティレベルは異なります。取引をしない間はネットに接続されないようにすることも可能です。しかし、大手の取引所の多くがハッキングされ、顧客のウォレットからコインが盗まれたこともあり、セキュリティ面で心配するのも当然です。現在はウォレット内の仮想通貨に対して保険を掛けている取引所もあります。これは非常にプラスなことです。それでもなお、ハッキングが凶悪になれば、取引所運営会社が保険上の義務を満たすだけの財力を有しているという絶対的な保証はありません。
また、取引所のウォレットを使うと、その取引所での売買に対応していない他の仮想通貨と取引することができない場合も多くあります。さらに、その取引所で売買していない仮想通貨をそのウォレットに保管することはできません。
これは通常のオンライン仮想通貨取引所ウォレットとほとんど同じですが、取引所から独立した提供元が開設するウォレットで、さまざまな選択肢が用意されています。
長所: 取引所外のオンラインウォレットを使う利点は、このウォレットを使ってあらゆる種類のやりとりができることです。取引所のウォレットとの取引や、仮想通貨でモノやサービスの売買も可能です。インターネットブラウザを使えば、どのデバイスからでもウォレットにアクセスすることも可能です。
短所: このオンライン仮想通貨ウォレットにおいても、安全性の問題が残ります。提供元によりセキュリティレベルは異なり、他と比べても堅固なシステムを有しているウォレットサービスもあります。しかし、ネットと繋がっているため、腕の立つハッカーに狙われる可能性が高く、実際にハッキングされた例もあります。
また、無料のオンライン仮想通貨ウォレットも存在しますが、強固なセキュリティを有するサードパーティーのサービスでは手数料が必要です。通常は1年分での支払いですが、少し割増すれば月ごとの支払いも可能です。
デスクトップ/モバイルウォレット: ネットに接続されたホット・ウォレットの最後に紹介するのは、デスクトップ型あるいはモバイル型のウォレットです。違いはウォレットがアンドロイドまたはiOSのアプリか、デスクトップ/ノートPCのWindows、iOS、Linuxアプリであるかだけです。取引をする時だけネットに接続すればいいので、一般的には常時接続のウォレットよりも安全だと考えられています。
長所: ネットを通じてアクセスを試みるハッカーからの攻撃を受けにくく、利便性も高いです。また、選択肢も多くあるので、所有を考えている仮想通貨全てに対応できます。
短所: ウォレットのアプリを購入する際に初期費用がかかるものがあります。しかしそれ以上に注意しなければならないのは、ウォレットがデスクトップやモバイルデバイスにインストールされているため、デバイスを無くしたり盗まれたり、修復不可能な損傷を受けると、ウォレットとその中身が消えることです。デスクトップとモバイルウォレットは通常、複数のデバイスを通じてバックアップすることが可能ですが、そのことは同時に安全面での脆弱性が高まることになります。
また、ウォレットがインストールされているデバイスがウィルスやマルウェアに感染された際には、ウォレットに対する安全面での懸念が更に高くなります。
コールド/オフラインウォレット
ハードウェア・ウォレット: ハードウェア・ウォレットは、仮想通貨取引をしたい時にPCと接続させ、それ以外は接続させない形のウォレットです。大抵は、小さな外付けハードディスクと似たものと一体となったインストール済みのウォレットソフトウェアです。
長所: PCに繋げてネットと接続する時間帯以外は、安全性が非常に高いです。しかし、ほんの僅かな時間に安全が侵される事態は発生しにくいです。ウォレットの違いにより、さまざまな種類の仮想通貨に対応しています。また大抵の場合、ウォレット用ハードウェアに複数のウォレットをインストールすることが可能なので、追加して入手したい仮想通貨がある場合、それに対応するウォレットをインストールすることもできます。
短所: ハードウェア型ウォレットの価格帯は幅広く、安いものもありますが、その分ツケを払わされることもあります。格安モデルは20~30ドルくらいからあります。また、接続元デバイスが既にウィルスに感染している場合には、ハードウェア・ウォレットも感染します。さらに、ハードウェア・ウォレットが故障したり盗まれたり、外部からダメージを受けると、保管されていた仮想通貨も失われます。ただし、複数のデバイスにコピーするなどして被害を抑えることは可能です。
ペーパーウォレット: ペーパーウォレットは、手持ちの仮想通貨の公開鍵と秘密鍵をプリントアウトして所有するものです。仮想通貨の売却や取引をしたい時だけ、これらの鍵を別のウォレットにコピーして使います。
長所: いかなるデジタル上もしくは電子上の脅威から仮想通貨を守ることができる最も安全性の高い選択肢です。紙がハッキングされたりウィルスに感染したり機能不全に陥ることはないからです。
短所: ペーパーウォレットの紛失、その紙をジーンズのポケットに入れたまま洗濯機に入れたら、仮想通貨は紙くずになります。それ以外には、仮想通貨の取引などをする前には、何らかのホットウォレットに公開鍵と秘密鍵を全て手入力しなければならないのも面倒です。