暗号通貨は2018年の間に次第にニュースから消えていった。2017年が、法定不換紙幣システムに取って代わろうと主流に乗って行き、ビットコインが2万ドルにも跳ね上がり、ブームに火がついて行った年だったとすれば、2018年は劇的なバブル崩壊を迎えるはずだった。実際にはそうならず、過去14ヶ月の間に暗号通貨市場はゆっくりと破たんしたかのように見える。

出典:Coinmarketcap.com
「本当の」金融バブルとは、評価が底値まで急落し、ものの見事に「崩壊」する事だろう。メディアの本格的な評論家達は17世紀オランダの「チューリップ・バブル 」と暗号通貨市場と比較することに躍起となった。
しかし、ビットコインとより広範囲の暗号通貨市場にそれは起こらなかった。1月までにビットコインの価値は約15,000ドルまで下がり、2月までには8000ドルを下回った。しかし再び11,000ドルを超えるまでに回復した。その後再び7,000ドルを下回り、また5月に9,000ドルを超えた。3500ドルへ崩れ落ちてからは、長期にわたって少しずつ上下するに留まり、その後価格は4000ドルへと上昇した。
暗号通貨は持ちこたえている。カナダ最大の仮想通貨取引所であるQuadriga CX創設者の急死により唯一のパスワードが紛失し、推定1億4,500万ポンドの暗号資産が凍結状態になったときを除き、暗号通貨が頻繁にニュースに顔を出す事は最早無いかも知れない。しかし暗号通貨はまだ裏舞台で息づいている。ニューヨーク株式取引所のオーナーおよびその他の主要な国際金融取引所のポートフォリオであるインターコンチネンタル・エクスチェンジ (ICE)は、Bakktと呼ばれるビットコイン取引の規制を設定しつつある。マイクロソフトとスターバックスはこの試みを支援していると報じられ、1月には2億ドル近くの投資ラウンドが発表された。 その資金はBakktの暗号通貨先物取引プラットフォームを構築するために使用される事となる。
ICEは、家族の支援があり、他の投資家を納得させることができる優れたプレゼンのスキルを持ち、失うものはほとんどない熱心な大学卒業生ではない。それは規制の下で設立された高名な世界的金融サービスブランドだ。しかしそれでも明らかに、暗号通貨には将来性があると考えている。 規制される予定の取引所にその名が列せられる。政府と金融規制当局は今でも白書と暗号通貨分野のレビューを委託している。実際にバブルが崩壊し、暗号通貨の道のりが終焉を迎えるなどとは誰も唱えない。
しかし同時に、大衆はより広範囲で関心を失い、評価は大幅に低下したとも受け取られる。ビットコインを使用して、アマゾンでいつでも商品が購入出来るなどといいうシナリオを見ることは難しい。加えて、パスワードを持った一人の男と一緒に飛行機で降下するのは、永遠に取り戻せない1億4500万ポンドにも相当し、暗号通貨が現代の金融界の病を治すシステムと思われない理由が簡単に理解できる。
では暗号通貨は終わりの時を迎え、その終焉まで延々とぐずぐず時間稼ぎをされるのか? 暗号通貨が本来あるべき速さで消える事は、集団的妄想に引きずられていると認める事をあまりに恥ずかしい、或いは恐ろしい、とする人々や機関が十分いる、ということなのか? それとも昨年はちょっとだけ簡単に再編成されただけなのか? 熱気が市場から去り、暗号通貨が主役になるための適切なインフラ整備作業が裏では行われているのか? そこには理論もある。金融機関は行動に出る前に暗号通貨の評価を落とす必要がある、という陰謀とも言える理論だ。
事実は暗号通貨が2017年に開始した時点でそれでも尚、数百パーセント上がっているということだ。少なくとも主要な暗号通貨についてはそう言える。その通りリスクを冒しても問題ないと思う。2017年は暗号通貨市場がバブルの様相を呈していたのだ。しかし、本当に重要な問題は、どんなバブルだったのか?ということだ。何故ならば、資産バブルには異なる種類のバブルがあるのは言うまでも無いからだ。
ドットコムバブルは、チューリップバブルと同種のバブルでは無かった。初期のインターネット企業には殆ど収益も無く、テストされたビジネスモデルでは無かったが、1995年から2000年にかけて、その分野全体で価値が急上昇した。同市場は崩壊し、ドットコム企業の殆どが上場していたウォール街の取引所、ナスダックでは一週間で25%もの損失が発生し、その後も滑降し続けた。
株式市場での激しい暴落が起きた時にはよくあることだが、ドットコムバブルの崩壊は多くの触媒作用によって引き起こされた。 第1に市場での強気相場が終わった時点で、評価の鈍い状況が生まれた。第2に金利の大幅な上昇が挙げられる。 第3は日本が世界の株式市場を怖気づかせるような景気後退に突入した事だ。そして4番目に来るものが大きい。バロンズが “「燃え尽きる。警告:インターネット企業の資金が尽きるのも直ぐそこだ」:と題した、やや扇情的な、ともすれば核心をついた記事を発行したことだ。
多くの企業がバブルの崩壊に伴い負け組に堕ちった。そこには、Pets.comやBoo.comのようなオンライン販売業者やWorldcom やGlobal Crossingなどの通信企業も含まれる。しかし生き残った企業も少なくない。シスコの株価は86%も急降下し、ICチップメーカー、クアルコムも莫大な価額の損失を被った。世界を牛耳っている。アマゾンもeBay同様急落した。こうした企業は今では悪くない業況だ。インターネットをベースにした企業が続いていることについても考えてみよう。フェイスブック、ネットフリックスその他諸々についてだ。オンラインのビジネスモデルを形成したテック企業がその世界を牛耳っている。
ドットコムバブルの結果、小麦をもみ殻から取り出すように、最終的に価値のあるものとそうでないものが選り分けられた。インターネットを使用する事が主流となり、投資家の興奮度は度を超してしまった。否応なしに掘り起こされて企業につぎ込まれた金はあちこちで評価を吊り上げ、莫大な価値のある企業を生み出したが、そのビジネスモデルやその構造、プロセス、マネージメントがつたないことが見落とされてしまった。
結局はその分野に恩恵を及ぼし、ますます力をつけた。シナリオはまったく同じではなくでも、2018年以降に仮想通貨市場で起こったことは、チューリップバブルよりもドット・コムバブルに遥かに相似していると容易に主張できる。証拠を考えれば、暗号通貨セクターは再編成、再組織化され弱者を淘汰し、強者および新参者を呼び起こしその秩序を造ろうとするのだろうか? 5年、10年、20年後には暗号通貨が2017年末よりもより強力な立ち位置にいたとしても驚くべきことでは無い。2017年仮想通貨バブルの歴史的な先例は十分にあるが、それはチューリップバブルではないのだ。